時よ、とまれ

今日、やりたいことは
すべて今日中にやってしまいたい、

と思っていて。

それは、日々の目標。


けど、やりたいことが多すぎて、
もやもやとして、

足りていない気持ちを抱いたまま、
眠りにつくことが多いんだ。


もっと時間が欲しい。



そして、時間が過ぎさっていくことに
どうしようもなく焦りがつのる。


せめて時よ、止まれ。


だから意味なんてないけど、
なんとなく…

精一杯の抵抗の証として、


僕は息を止めるんだ。



時よ、とまれ。

iPod nanoの話 その４

…妄想劇の続き。

いちお小説風味。


>>iPod nanoの話　その１
>>iPod nanoの話　その２
>>iPod nanoの話　その３



彼女が動かなくなってから、
時は止まった…

はずだった。

他方で、日々は繰り返していった。
何事もなかったように、たんたんと。


むしろ、何事もなかったのかも知れない。

僕は、CDプレイヤーを主にして、
変わらず音楽を日常としていた。


彼女は動きを止めたまま、
枕元に横たわっていた。

ほんの二日ほどは、
電源を入れようとしてみたりもした。


しかし、かすかな鼓動も感じなくなり…

ただ横たえるままにするようになった。


時は確実に過ぎていた。


痛みが記憶として収まり、
記憶はやがて収まるべき場所へと
自然に移ろいでいく。



いつしか僕は、新しい出会いを
意識するようになった。


では。

iPod nanoの話 その３

必死だった。


ひたすらに必死だった。

稼働中の洗濯機に飛び込むような、
勢いでnanoを…

を取り出した。


手遅れの気持ちを必死に無視して、
身体をぬぐった。

息を吹き返しくれることを…


それだけを、

ひたすらに一途に願った。



永遠のような時間（とき）が過ぎていく。



では。

iPod nanoの話 その２

彼女は動かなくなった。


自分の過ちに気づいた時は
既に遅かった…遅すぎた。


薄手のパーカーのポケットに入れたまま、
iPod nanoを洗濯機に投入してしまった。

洗濯用洗剤に加えて、柔軟剤まで
加えて、洗濯してしまった。


些細な行き違いから、自分では
全く気づかないまま…

彼女を傷つけてしまった。


一緒に過ごした、その日。
出会ってからまだ数ヶ月しか
経っていなかったけど、
彼女と過ごす日々は既に、そして、
確実に当然の日常となっていた。


そんな普段の１日。

残暑の合間に、秋風がふいに
頬をかすめていく時期だった。



では。

夜が朝になる

パーティのあと、
アルコールで朦朧としながら、
動き始めた街の空気を吸う。

紫煙と熱気の残り香が
身体に染みていることに
気づいて…

朝日が目にしみる。



では。

iPod nanoの話 その1

2年ほど前、人生で
初めてもらったボーナスで
買ったiPod nano。

ダンスの発表会の直前だったから、
買った当初からヘビー・ローテで
踊る曲を聴きまくった。

まだ人前で踊る経験も少なかったから、
とにかく必死で聴きまくった。

不安な気持ちもいっぱいで。


そして、発表会も無事に終わり。

iPod nanoは淡い思い出とともに、
おれのパートナーになり、日常となった。


いつしか、おれは
「彼女」とずーっと一緒だと
思い始めていた…


だけど、その日は突然に訪れた。

ほんの約1ヶ月後のある日。
買った日からも、わずか2,3ヶ月後…



彼女を洗濯ッ!!してしまった。


パーカーのポケットに入れっぱなしのまま、
忘れて洗濯機に投入。

柔軟剤も投入…


気づいた時は既に、洗濯機はフル稼働中。

“洗いモード”の真っ最中。


急いで取り出して、数時間後。
乾いた頃を見計らって、電源入れてみたけど…

一瞬、画面が瞬いて消えてしまったiPod nano。

抱きしめようとした瞬間、
「彼女」は消えてしまった…


どうしようもなく後悔した。

彼女を追い込んでしまった自分…

彼女が苦しんでいる時、
気づけなかった自分を呪った。



そして、動かなくなった彼女。

何度も蘇って欲しいと願って、
キーを長押しした…胸をさすった。

彼女の鼓動を、脈が…
彼女のBeatが聴きたかった。


短い間だったけど、
ほんのひと夏の間だったけど。

ものすっごくいっぱい思い出があって。


…堕ちた。


～続く～



では。




※the Phote is...：
人生で初めてもらったボーナスで買ったもの、など。
写真中央にそのiPod「彼女」。

[五・七・五・七・七] 春の風

柔い風、
鼻をくすぐる

目をつぶり

深呼吸する


桜の薫り




では。